一人な話
究極に一人だ。一人きりだ。
完全に人は人でうちはうち、それどころか己は己だ。
個としての自覚はあるのに、その個が透明で空っぽだ。
人がどんな気持ちか想像することは難しくないけど、大概考えすぎて過熱する。
傷つきたくないし傷つけたくない。
何て言葉なら傷つけないで済むか、この人の生涯でどういうことがあったのか、この人の環境はどうなのか、邪推するおれが傷つかずに済むか、邪推されたと傷つけずに済むか、この言葉は地雷じゃないか、この先話していくために障害とならないかとか色々考えて、結局何も声をかけられない。
一言で取り返しがつかなくなることが怖い。
何重もそんなフィルターをかけて考えるから、返事のタイムラグを嫌がられるのも怖い。
加害妄想が強いんだろうか。自分にそんな影響力はないと諦めてる割に傲慢だ。
無欲に生きてるつもりだけどこんなに自分の立場に固執してたら世話ないな。
友達とケンカしながら切磋琢磨だんだん仲良くなるべき時期に、たぶんおれは逃げ続けてた。
よく泣き出すクラスメイトなんかだるいよな。逃亡したら、昼休みに一緒にサッカーするやつらと先生が毎回探しに来てくれたんだよ。
大体落ち着くまで待たれて、保健室に連れてってくれた。
たまに何故か校長室に居た覚えがあるけどあれはなんなんだろう。
なんにせよそいつらと先生が優しくて、ずっと甘えたままでいた。
当時もどうしようもなかったけど、今はただ申し訳なく思う。
まぁ、こんなんじゃ親友なんかもできないよな。
中学校からは学校に行くヒキコモリって感じのイメージで誰かと遊んだ記憶もほとんどない。ずっと本読んでた。
でも頭空っぽだから感想も沸かなかったしエンディングも覚えられなかった。
アニメは時間を縛られてる気がして見れなかった。
いんたーねっつ、ねっとげーむ。一期一会のチャットばかりしてた。
全員同じテンションで話せばいいんだから、楽なもんです。
ゲームサービスが終わったらもう話したこともない。あの人たち元気にしてんのかな。元気だといいな。
傷つけてる覚悟も傷つく覚悟もなく、ぬるい膜の中で息をしてた。
いつだって一人だ。それで別に大丈夫。勝手に傷ついたら逃げたらいいし。ずっとそうだったし。
ただよく話してくれる優しい人がつらそうなとき、何も出来ないで打った文字を消す自分が歯がゆい。
皆が、平和だといい。幸あれ。