自棄な話
痛む。
身体に触れている空気が痛い。存在してないものが痛い。
本体の痛みすら鈍感なのになんでこんなところが痛いんだ。アホなのか。
鬱屈とした感情が身体を支配するとき前まで左の顔面にぴりりっと緩い刺激が走っていた。最近はそれがなくなってる。
空気の痛みはいつからだったろう。
合ってるか確かめる方法はないけれど、たぶん腕を切らなくなってから。
肉体の痛みを補うために生まれた感覚なんじゃないかな。腕切り中毒の後遺症。
憂鬱になる限りいつまでも傍にいるのかもしれない。優しくしてくれよな。
救急車の音が怖い。救急車が来ても止まろうとしないドライバー達は即刻免許を返上しろ。頼む。
お前らは、おれたちは凶器に乗ってるんだぞ。一秒を争う命の攻防が見えないのか。
いつもは心に蓋をしていてもふとしたときに命日を思い出す。
あの日おれが119に取った対応は最悪だったんじゃないだろうか。パニクってたからどうしようもなかったとはいえ。
蘇生法を知らなければ救急車を呼んだまま119に指示を仰ぐこと。大事だよ。
今どういう対応をするべきだったか調べてみたら死因が明らかだった妹のことを思い出して悲しくなった。
体調ヤバいな?って思えるうちに救急相談ぐらいしてよ。
精神も然り。死にたくなったら仕方ないから誰かに言おう。死ぬ前に言おう。
いのちをだいじに こそ至高とは言わない。そんなくだらないことは言わない。
擦り切れてしまいそうな生命ぐらいは大事にしたい。
あぁそう言うと死ぬ間際まで知らなかったって言う酷いやつか。そんなやつにはなりたくなかった。
優しくなりたい。一番つらいときでも、しんどいときでも楽しいときでもしっかりと寄り添えるようになりたい。
どう声をかけることこそが正解だったのか模範解答でいいから欲しい。
おれはガキでワガママで自分の中にある話しかできない。ついおれの枠を通して喋り出すことは正しいことか。自己主張ばっかりだ。
分からない。自分のこととしてはいいこととは思えない。悪い癖だ。
本当に他人がどうでもよくて今つらい自分やつらかった自分に酔ってるんだなあって反吐が出そう。中身もない癖に何をふざけているんだろうか。
海外行ったときにもっと気持ちをシェアしていいんだよと何度も言われた。
友達がいないと言ったら私が友達になるよと何人も言ってくれた。
シェアするほどにおれは心を持っていないんだよ。
心を開いて友達になるなら心がないからなれないんだよ。
最悪だ。善意を理解しながら笑って素通りしていた。
つらいことも分かる。何も言えなくて、何度も素通りした。
悲しい。なんでこうも、一線を引いてしまってるんだ。
腕から透明な血が流れてる。陽炎みたいなゆらめきを感じる。
幻覚なんだろ。病気でもなくただの第六感だ。知ってるぜ。
音が遠い。そのうち耳がすごく悪くなりそう。
薄っぺらいから何度も同じことを言うこともだるいし申し訳ない。
こんなもんなんだおれなんか。ごめんな。
息が苦しい。頭がどくどく言ってる。
今日は早めに寝よう。